恩師 クリフォード ハバード氏
私がラブラドールについて勉強していた頃、ある年のウインザー展でクリフォード氏と運命的な出会いがありました。彼に出会っていなければ、今ほどにラブラドールについての知識等は持つ事ができなかったでしょう。
この素晴らしい犬種を理解するにはまず英国を知るのが近道だと思った私は渡英を決意しました。彼は話す事すらおぼつかない私に、ダイレクトに犬の話をするのではなくて、ポンテルウィッド(悪魔の谷)や山の上の湖、ウエールズの美しい所へ連れて行き自然を愛する心を教えてくれました。その頃の私は綺麗な花が好きでしたが、道沿いに咲く花などについてはほとんど関心がありませんでした。仕上がった物が好きな私は、根底から変わりました。道沿いに今を盛りと咲き誇るレースフラワーに初夏を感じて「ハロー。」と声をかける彼の短い夏を楽しむ生活は決して物質的には贅沢ではないけれど心の贅沢をたくさんしているのだと感じるようになりました。
少しずつラブラドールを勉強するようになってからは、私に応じた本を用意してくれ、いつも私がどのような本を必要としているのか読まなければならないのかを的確に理解して下さっていました。英国に滞在しているときはもちろん彼の家に遊びに行ったりして楽しい時間を過ごす事が出来ました。いつも帰るときに空の容器にどのジュースが欲しいのかを聞き、私の好きなチーズとトマトのサンドイッチを作って持たせてくれて必ず、
「アキコ、汽車の中では何も買って食べてはいけないよ。きれいじゃないからね。それとジュースの容器は駅に着いたら捨てなさい。荷物になるからね。それにロンドンはお洒落な人が多いからこんな物を持っているとばかにされちゃうよ。」
と何度も繰り返し注意してくれていたことを思い出します。
老齢な彼の事と日本と英国の距離を考えるともう二度と会えないかもしれないといつも別れ際は泣いてばかりいましたが、そんな私を見て彼はいつも又会えるよと笑って言ってくれていました。
「アキコ ダーリン。」「マイデアー」
いつもいつもそう呼んでくれていました。あれから何度目かの春が来てもう二度とあの声も笑顔も会う事は出来ないけれど、きっとどこかで私の事を
「ノーティー。ダーリン」
などと思いながら見てくれているでしょう。そして私が生きている限り彼の精神は私の中で生き続けるのです。
彼に教えてもらった心の贅沢とブリーディングに対しての真摯な気持ちは一生の宝としていつまでも忘れる事なく持っていたいと思っています。
アベリースツイスからロンドン郊外の家に戻るときにいつも彼は私に
「アベリースツイスを好きになったかい?お気に入りと言ってごらん。」
と尋ねていました。私はいつも照れてへへへと笑っていましたが、今こそ
「もちろん大好きです。私の特別な町です」
と正直に答えたいと思います。
アイリッシュ海峡を望み氷河期からのなだらかな丘陵を持つこの小さな町は確かに私の中でラブラドールの始点となりました。異邦人の私をただラブラドールが好きというだけで、信じてあれこれと世話をしてくれたクリフォード。
この素晴らしい恩師のおかげで私はラブラドールの勉強だけでなく人の心の暖かさを学ばせて頂きました。それだけで私の遅ればせながらの留学生生活は有意義であったと言えるでしょう。
ありがとう。大好きなウエールズ!
そして心からありがとう!クリフォード!
クリフォードが亡くなってもう随分経ちますが、春を迎えるたびに懐かしいウェールズの家を
思い出します。家が傾くのではないかと思われる程の本の量は、彼が如何に本を愛していたかということがわかります。 特にお気に入りの本は彼の部屋に陣取ってあって、よく私に
「こんな本は世界中どこを探してもないと皆思っているけどおじいちゃんは持っているんだよ」
なんて言って自慢していました。
亡くなった翌年、シーリーと一緒にお墓参りにアベイロンの墓地に行きました。
クリフォードの祖父母が眠るふるさとです。
海を見下ろすその場所は、大好きな祖母との思い出がいっぱいつまった場所なのでしょう。
下記に少し照れくさいですが詩を作ってみました。
懐かしのクリフォードへ
For My Dearling Mr Cllifford,
春が来るよ クリフォード。
あの懐かしいポンテルウィッドの古い家にも花が咲くよ。
ダフォディル、ダフォディル!
ああ、ウェールズの花よ。春風に黄色の花びら運ばせて
アベイロンの丘へ春が来たよと伝えてよ。
こころの言葉を伝えてよ。

クリフォードに見せたかった日本の桜
I met Clifford while studying about Labradors.
Had I not met him,I never would have had the opportunity to learn so much about the dogs. The key to learning so much about this wonderful breed of dog is to first learn about the UK.Clifford didn't talk to me in blunt terms about dogs,but rather taught me about the beauty of Pontrywed and showed me the beauty first hand-like the lake on top of the hill.
At that time,I liked special beauty flowers,but really had no knowledge of it.
As I began my studies of Labradors, Clifford introduced me to many useful books as he knew just which books I should be reading.
Ofcouse,when I was living in the UK,Ihad several opportunities to visit his home.
Whenever I would leave to go home, he would see my empty thermos and ask me what kind of juice I wanted to drink.
And he would caringly remind me to stay away from buying food on the train,
As it wasn’t the cleanest. So he made me my favourite cheese and tomato sandwich. He would say “ Akiko ,be sure to throw away that thermos when you get to London because it’s too heavy.Also,you don’t want people to think you’re a drinker.”
I remember how often he reminded me of this.
Whenever we parted ways,I would think of his age and the distance between the UK and Japan and I would uncontrollably cry.
He would smile and say “Akiko,my darling.My dear,we’ll meet again.”
He always called my by those fond names.
Two springs have since past since that last encounter and although I won’t ever hear that voice again or see that smile, I’m sure that from somewhere he is looking down on me, saying “ Darling. Lovely!”
What he taught me about breeding is so valuable.
His influence,though,is a treasure and will be with me for always.
Whenever I returned from Aberystywth to the house outside of London,he would ask, “ So do you like there yet? Say you do.”
I would just laugh.
In all seriousness,though I’d now like to say “ Yes,it’s a very special place to me “
This place hold a special place in my heart and holds meaning of Labradors, which are such a big part of my life.
Because of this wonderful man, I was able to learn about Labradors and also about the human heart. If only for that, my stedies were well worth the time I spent there.
Thank you to the Wales that I love.
Thank you very much Clifford- from the bottom of my heart.
Akiko Abe
For my dearling Clifford
Spring is coming, Clifford.
The flowers in front of the old Ponterwyed will bloom.
Daffodil ! Daffodil
The Welsh flower.
The yellow petals carried in the Spring breeze,
Announce the coming of Spring on Aberaeron hills.
Proclaim the words of the spirit.

アベリースツイスの丘の上から海岸を見下ろした所
夏はケーブルで登る事が出来ます。

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